最新戦法の事情【居飛車編 春季号】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情 振り飛車編(2021年9月号)

振り飛車 2021年9月

どうも、あらきっぺです。暑さもだいぶ和らぎ、秋の気配が漂いますね。ずっと今の季節だと過ごしやすいんだけどなぁ笑

 

タイトルに記載されている通り、振り飛車の将棋を見ていきましょう。なお、前回の内容はこちらからどうぞ。振り飛車 あらきっぺ最新戦法の事情 振り飛車編(2021年8月号)

 

注意事項

 

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。
棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。
全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。

 

・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。

 

最新戦法の事情 振り飛車編
(2021.8/1~8/31)

 

調査対象局は51局。今回は対局が少ない時期でした。それでは、戦型ごとに解説していきましょう。

 

先手中飛車

突然の消失


たった3局のみ。前回の期間から出現率は16.9%→5.9%と激減しました。

これは先手中飛車に問題があるというよりも、後述する三間飛車に人気が集中していることが要因かと見ています。とはいえ、ここまで局数が落ち込んだのは、かなり驚きました。

 

四間飛車

早々に美濃は決めたくない


13局出現。先手番で8局。後手番で5局。二年ほど前までは後手番で指されるケースが圧倒的に多かったですが、このところ先後の偏りはさほど激しくないですね。

居飛車の対策は、持久戦(理想は端歩突き穴熊)を志向するものが多数派。ただ、持久戦と言えども、昨今では急戦を匂わせながら駒組みする手法がトレンドではあります。ゆえに、振り飛車も急戦を警戒しながら端歩突き穴熊を牽制する駒組みが求められていますね。(第1図)

四間飛車 急戦対策

こういった局面は、四間飛車において頻出する形でしょう。この局面で注目すべきところは、振り飛車が▲6七銀と上がる手を保留していることです。

▲6七銀をあまりに早く指すと、端歩突き穴熊と急戦を両天秤にされたときに対処が難しくなる弊害があります。詳しくは、以下の記事をご覧くださいませ。

2021年 振り飛車最新戦法の事情 振り飛車編(2021年1月号)

 

四間飛車 急戦対策

ちなみに、振り飛車が▲4六歩や▲3六歩を優先しているのは端歩突き穴熊を妨害するためです。穴熊に組ませないためには、早めに▲3七桂と跳ねたり▲4五歩と突っ掛ける攻め筋を見せる必要があるので、これらは必要経費と言えますね。

しかし、この二手は対急戦においては不要不急です。ゆえに、ここから居飛車が急戦を採用することは大いに考えられるでしょう。今回は、これをテーマに解説を進めます。

四間飛車 急戦対策

急戦に出るなら、まずは△7四歩になります。振り飛車は▲3九玉が自然ですね。

▲7八銀型の場合、△6四銀→△7五歩と攻めても▲6五歩の反発があるので成果が上がりません。よって、居飛車は△7二飛▲2八玉△9四歩と力を溜めておきます。いきなり仕掛けず、端歩を突いて様子を見るのがちょっとした工夫ですね。

なお、この局面の類例としては、第63期王位戦予選 ▲西田拓也五段VS△斎藤慎太郎八段戦(2021.8.27)が挙げられます。(第2図)

四間飛車 急戦対策

ここで振り飛車はどう待つかですが、▲6七銀と上がると、すかさず△7五歩▲同歩△6四銀と仕掛けられて困ります。これは▲6五歩と突いて角交換になったときに▲7七同桂と取るしかなくなってしまうので、振り飛車は7筋の守りが不安定になることがネックですね。

四間飛車 急戦対策

つまり、振り飛車は隙を作らない待ち方が求められているのです。そうなると▲9六歩が一案ですね。これで悪影響が無ければ話は早いところです。

ただ、9筋の突き合いが入ると、居飛車は仕掛けの条件が良くなります。具体的には、△7五歩▲同歩△同飛▲6七銀のときに△7六歩▲8八角△9五歩と突っ掛けて来る攻め筋がありますね。(第3図)

四間飛車 急戦

これを素直に▲同歩と取ると、△8六歩▲同歩△9五香▲同香△8七歩がうるさい攻撃。これは角が負担になるので、振り飛車が非勢でしょう。

四間飛車 急戦

したがって、ここは端歩を無視して▲7八飛△9六歩▲7六銀と対応することになります。9筋の取り込みは許しますが、7六の歩を払ってしまえば一潰しにされる心配はありません。その局面の評価は好みが分かれるところかとは思いますが、筆者はこの岐れなら振り飛車もまずまず戦えるのではないかと考えています。

 

こうして見ると、▲7八銀型で待機しておけば急戦に対して互角以上に対抗できるように思えます。ただ、実を言うと万能とは言い切れません。なぜなら、二つの懸念点があるからです。

四間飛車 急戦対策

まず一つ目は、▲9六歩のときに居飛車がさらに様子を見てくる可能性があるからです。例えば、△4二金直が挙げられます。これは玉頭や側面を補強しているので、なかなか価値が高いですね。対して、振り飛車は有効なパスが難しいので、何を指しても△4二金直より劣る手待ちしかないように見えます。

勝敗に直結するような部分ではありませんが、この将棋の振り飛車は、仕掛け周辺で毒にも薬にもならない手を強要されがちなところがあります。そういった要素は、少し癪に障るかも知れません。

 

四間飛車 急戦対策

もう一つの懸念事項は、早めに▲4六歩を突くことでミレニアムに対して相性が悪くなることです。ミレニアムにはこちらの記事で解説したように、[▲6七銀・▲4七歩型]という配置で駒組みを進めるほうが対処しやすい性質があります。

四間飛車 急戦対策

ですが、第1図ではご覧のように、[▲7八銀・▲4六歩型]ですね。これは先述したように端歩突き穴熊と急戦に対応するための工夫なのですが、これはこれで違う弊害を抱えてしまうということなのです。「彼方を立てれば此方が立たず」といったところですね。

先手四間飛車のジレンマ

 

四間飛車 急戦対策

話をまとめると、現環境の先手四間は、手が早く進むがゆえに態度を決めなければいけないというジレンマを抱えています。第1図のように早々と美濃囲いを決めると端歩突き穴熊を許せなくなるので、必然的に▲4六歩や▲3六歩を優先しなければいけません。しかし、そうすると急戦やミレニアムに対して相性が悪くなるのです。

四間飛車 急戦対策

現環境では端歩突き穴熊の評価が非常に高いので、急戦やミレニアムが相手ならそれで構わないと見ている節はどことなく感じます。とはいえ、居飛車としては条件の良い形でそれらの戦型を選べるので、避ける理由はないでしょう。現環境は、第1図のようなオープニングなら居飛車満足という情勢ですね。

 



三間飛車

三間ミレニアムがホット


20局出現。出現率は驚異の39.2%。最新戦法の事情はおよそ四年ほど続けていますが、40%に迫る数字を叩き出したのは記憶にないですね。

現環境の三間飛車は作戦の幅がすこぶる広く、その多様性が爆発的な流行の要因ではないかと考えています。中でも、三間ミレニアムは目新しく要注目の作戦と言えます。(第4図)

三間飛車 ミレニアム

角道を止める振り飛車は、端歩付き穴熊が最大の敵です。三間ミレニアムは、これを打ち破るために編み出された作戦ですね。四間飛車と違い、△5三銀型に組めることが三間ミレニアムの特色になります。

ここから振り飛車は囲いを発展し、その後は△6四銀→△5二飛で中央から動くのが一策ですね。(参考図)

三間ミレニアム

これはなかなか優秀で、居飛車は端歩付き穴熊に組めてもアドバンテージを得ることは出来ません。詳しくは、以下の記事をご参照くださいませ。

最新戦法の事情 振り飛車編(2021年4・5月合併号)

 

そして、振り飛車は△6四銀型ではない構想にもチャレンジしています。今回は、その指し方を紹介してみましょう。(第4図)

三間飛車 ミレニアム

まず一つ目のプランは、ここから△3五歩▲9九玉△4二角で石田流を目指す組み方です。(第9図)

なお、この作戦の実例としては、第63期王位戦予選 ▲広瀬章人八段VS△高崎一生七段戦(2021.8.5)が挙げられます。

三間飛車 ミレニアム

これは居飛車が▲4八銀型を維持していたことを咎めに行く意味があります。居飛車は石田流を警戒するなら、▲5七銀型に構えていち早く「射手の構え」を作れるようにするのがベストです。

ただ、そうすると▲6八角→▲2四歩のような動き方を消してしまう弊害を抱えます。ゆえに、参考図のような将棋のときには▲4八銀型のまま駒組みを進める方が攻め筋が広がるのですが、振り飛車はそれを逆手に取ったという訳なのですね。

三間飛車 ミレニアム

なお、ここから居飛車が「射手の構え」を作ってきたらどう対処すれば良いのかという懸念はありますが、結論から述べると振り飛車は十分に対抗することが可能です。詳しい理由は、以下の記事をご覧くださいませ。

最新戦法の事情・振り飛車編【2021年9月号 豪華版】


次に、もう一つ違う構想を見ていきます。先程は5三の銀を囲いにくっつけて戦う将棋でしたが、これを4四へ上がって使う構想を披露した将棋もあります。(第6図)

三間飛車 ミレニアム

三間飛車でこの場所に銀を配置するのは、かなり珍しいですね。銀の力で圧迫していくことが狙いになります。軽やかに指す[三間ミレニアム+石田流]とは真逆の発想と言えるでしょう。感覚的には、四間飛車に近い指し方でしょうか。

なお、この将棋の類例としては、第63期王位戦予選 ▲増田康宏六段VS△黒沢怜生六段戦(2021.8.25)が挙げられます。

三間飛車 ミレニアム

ここから居飛車には複数のプランがありますが、最も欲張っているのは松尾流穴熊を作る構想です。これを完成させてしまえば、作戦勝ちが期待できるでしょう。

つまり、▲7八金△8一玉▲6八銀と進めることになるのですが、その瞬間に△5五歩と仕掛けるのが大事な一手。振り飛車は囲いが中途半端ですが、▲7九銀右を指される前に行動を起こすことがポイントですね。(第7図)

三間飛車 ミレニアム

これを▲同歩と取ると、△5二飛と回って5筋に戦力を集めます。銀が5五で安定すれば中央を制圧できるので、そういった展開になれば振り飛車も大いに戦えるでしょう。居飛車は松尾流穴熊に無事組めれば万々歳ですが、それを目指すのはそれ相応のリスクがある印象ですね。

 

それでは、まとめに入ります。今回解説したように、三間ミレニアムは様々な選択肢があることが大きなメリットです。△6四銀型以外にも魅力的な構想があるのは嬉しい要素ですね。作戦のパターンが複数ある戦法は対策を練るのに苦労するので、居飛車としては手強い相手だと言えるでしょう。

三間ミレニアムはまだ指され始めて間もない戦型なので、多くの鉱脈が眠っている印象を受けます。今後の環境を占うキーマンであることに疑いの余地はありません。要注目の戦型ですね。

 

角交換振り飛車

▲7七銀型では苦しい


5局出現。出現率は10%を切っており、かなり下火ですね。現環境では角道を止める振り飛車が覇権を握っているので、これを選ぶプレイヤーは少数派です。

角交換振り飛車は、▲7七銀型(後手なら△3三銀型)に組むのが最もポピュラーな指し方。ただ、▲7七銀型は以下の局面に組まれたときに、攻めの形を作りにくいという課題を抱えています。(第8図)

角交換振り飛車 対策

この局面で注目して欲しいのは、居飛車が囲いの整備ではなく、[△8五歩・△7四歩]の二手を優先的に指していることです。この組み方をされると、振り飛車が主導権を握るのは容易ではありません。

なお、この指し方の実例としては、第15回朝日杯将棋オープン戦一次予選 ▲石川優太四段VS△出口若武五段戦(2021.8.25)が挙げられます。

角交換振り飛車 対策

居飛車が△8五歩を早く決めてきた場合、逆棒銀で反発するのが基本姿勢。けれども、この場合は▲8八飛△6四歩▲8六歩と動いても、△同歩▲同銀△3三角▲7七角△7三桂と対処されると上手く行きません。


画像57

ゆえに、振り飛車が動きを見せるなら▲8六歩ではなく、▲6六銀△6三銀▲7五歩から7筋の歩を交換することになるでしょう。確かに、こう指せば早い△7四歩を逆用することは出来ます。

しかし、歩を交換した後のビジョンが難しいことが振り飛車の問題点なのです。(第9図)

角交換振り飛車 対策

7筋で歩交換すると、こういった局面になることが予想されます。ここから振り飛車は持ち歩を活かした攻め筋があれば嬉しいのですが、残念ながらそのような手段はありません。

そうなると駒組みを進めるのが関の山。ただ、こういった将棋は居飛車の方だけ攻め側の桂が使いやすい将棋になるので、どうも振り飛車は面白くない将棋になりやすいですね。

 

角交換振り飛車 対策

話をまとめると、▲7七銀型の角交換振り飛車は[△8五歩・△7四歩]の二手を優先されたときに苦労しています。角交換振り飛車は、もっと違うパターンの駒組みを模索しないと生き残れない戦法という印象ですね。

 

その他・相振り飛車

様々な含みを持たせる


10局出現。なお、相振り飛車は2局でした。

この10局の中では何か特定の戦法が流行っているという訳ではなく、いろいろな戦法がポツポツと指されていました。そんな訳なのでホットな戦型は不在なのですが、後手番において有力な作戦を披露した将棋があったので、それを紹介したいと思います。(第10図)

最新 振り飛車

この局面は、ときおり見られるオープニングの一つです。こういった端歩の打診は珍しくありませんが、飛車を振る前に端歩を突いているのがちょっとしたポイント。これにより、作戦の含みを増やす意図があります。

さて、この端歩を受けるか無視するかはプレイヤーの好みが分かれるところですが、現代では端歩突き穴熊の評価が高いことや、なるべく急戦と持久戦の両方を見せておきたいという思惑があるので、▲9六歩と受ける方が自然ではあります。

最新 振り飛車

▲9六歩に対して、後手は△3二銀▲6八玉△4三銀▲5八金右△3二金▲7八銀△5四歩と正体を見せずに駒組みを進めます。

△3二金と上がっているので、雁木の採用が色濃い感は漂います。しかし、飛車先の歩を伸ばしていないので、まだ作戦が確定した訳ではありません。(第11図)

中飛車 定跡

さて、先手も極力手広い指し方を行ってきましたが、ある程度手が進んだことにより、これ以上は含みを持たせられません。そろそろ作戦を決める時が来ました。

とはいえ、まだ先手には▲3六歩や▲7九玉など、態度を決めない指し方はあるように見えます。しかし、ここでそれらの手を優先すると、雁木に対して有力な[腰掛け銀+左美濃]の作戦を採用しにくくなる弊害があるのです。詳しい理由は、以下の記事をご覧くださいませ。

最新戦法の事情【豪華版】(2020年2月号・居飛車編)

 

中飛車 定跡

また、雁木には早繰り銀で速攻を仕掛ける作戦もありますが、その将棋は9筋の突き合いが雁木側にプラスに作用することが多く、先手は少し選びにくい背景があります。

中飛車 定跡

なので、先手が対雁木を想定するのであれば、ここは▲4六歩が最もアグレッシブ。この手を優先すれば[腰掛け銀+左美濃]を組む際に不都合は生じません。

ただ、この手を見て後手もようやく態度を決めます。△5二飛と中飛車に構えるのが臨機応変な一着ですね。(第12図)

中飛車 定跡

一般的に、対抗形の居飛車は4筋の歩を突く手を優先しません。角道を止める中飛車に対しては、特にそうでしょう。後手はその性質を逆用したわけです。中飛車であれば、△3二金型も悪くない配置ですね。

なお、この指し方の実例としては、第71期ALSOK杯王将戦二次予選 ▲近藤誠也七段VS△佐藤天彦九段戦(2021.8.12)が挙げられます。

中飛車 定跡

もちろん、この局面は一局の将棋の範疇ではありますが、後手は普通よりも良い条件で中飛車を採用することが出来ています。左美濃や▲4六歩を決めさせたことで、居飛車の駒組みの幅をかなり狭めていることが主張になりますね。

 

最新 振り飛車

それでは、話をまとめましょう。図のように早い段階で端歩を打診し、相手の態度によって相性の良い作戦を採用する作戦はかなり面白いと思います。

中飛車 定跡

雁木と振り飛車の両方を指せることが条件にはなりますが、普段よりも少し得した条件でそれらの戦法が指せることは大きなメリットと言えます。後手番の主力になり得るかどうか、注目ですね。

 


お知らせ

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参考 最新戦法の事情【振り飛車編】(2021年9月号 豪華版)

 

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有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!

 

今回のまとめと展望

 

【コンベンショナルな指し方は限界なのか?】

相変わらず多種多様な将棋が指されていますが、現環境においてはコンベンショナルな指し方は苦戦している印象を受けます。

画像84

例えば、この四間飛車の将棋は昔からよく見かける指し方の一つですね。ここから△5三銀▲3六歩と進めば第1図に合流します。先述のように、そうなれば振り飛車もまずまず戦える将棋ですね。

ただ、この指し方は△4四角からミレニアムを目指されたときに相性が悪い懸念があるので、この組み方で良いとは言い切れないことがネックと言えます。

 

角交換振り飛車 対策

また、▲7七銀型に構える角交換振り飛車も長きにわたって指されている作戦ですが、これも苦労が多いのは上記の通りですね。

 

最新 振り飛車

逆に、三間ミレニアムのような従来では見られなかった作戦は、多くの可能性があり存分に戦える情勢という印象を受けます。特に、この作戦は含みが広く、型にハマりにくいことも利点の一つと言えるでしょう。

 

伝統的な将棋は試行回数も多いので、何度も指されていると対策が見えやすくなることは確かです。現環境では「新しい」「含みが広い」といった作戦が好まれる傾向があり、それとは真逆の発想であるコンベンショナルな指し方は苦労している印象を受けますね。

 

【手札を二枚用意する】

現環境では、メインとなる作戦の裏に、もう一つ主力戦法を用意しておく戦術がトレンドになりつつあると感じています。これは上記の「含みが広い作戦が好まれる」という部分と通ずるところがあるでしょう。

最新 振り飛車

今回の記事で言うと、この振り飛車と雁木の二つを見せながら駒組みする作戦は、それを如実に体現していると言えます。

後手は△9四歩と突いたところでは、基本的に振り飛車を志向しています。相居飛車の場合、9筋の位を取ってもそれを活かすのは容易ではありませんから。

振り飛車 最新

しかし、▲9六歩を見ると一転して雁木を志向し、先手が雁木対策にシフトすると再び振り飛車に戻しています。こうして複数の作戦を視野に入れておけば、後出しジャンケンがやりたい放題なので、より良い作戦をチョイスできるという訳なのですね。

 

他の例としては、以前の記事でも解説した四間飛車に対する「端歩突き穴熊と急戦を両天秤に構える作戦」もその代表例です。

こういった手法が増えているのは、複数の選択肢を持てる方が強いという理由もありますし、一つの戦法を単独で活かすのは難しいということを示唆しているとも受け取れます。現環境では、主力戦法を他の作戦と上手くリンクさせる工夫が鍵を握っているのかもしれませんね。

 

それでは、また。ご愛読くださり、ありがとうございました!

2 COMMENTS

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毎月このブログの記事を読ませて頂いています。
本記事とは関係ないのですが、中飛車左穴熊が指されなくなったのは中飛車左穴熊が不利という結論がでたからのでしょうか?それとも今回の先手中飛車のように他の対策のほうがより有力とされているからなのでしょうか?

あと今度「終盤戦のストラテジー」を買って読ませていただきます。

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あらきっぺ

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

中飛車左穴熊が見かけなくなった理由は、左穴熊よりも面白い指し方が発見されたからだと見ています。具体的には、こちらの記事で解説した作戦は有力だと思います。

また、拙著をお買い上げくださるとのことで、恐縮です。少しでも為になる内容であれば幸いです。

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