最新戦法の事情【4月号・居飛車編】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情(2020年2月号・居飛車編)

最新 居飛車

どうも、あらきっぺです。今年は閏年なのですね。お陰さまで、ブログを書くための時間が一日分、伸びました笑

 

タイトルに記載している通り、プロ棋界の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。なお、前回の内容は、こちらからどうぞ。

居飛車 最新最新戦法の事情(2020年1月号・居飛車編)

 

注意事項

 

・プロの公式戦の棋譜から戦法の評価を分析しています。調査対象は先月のプロの公式戦(男性棋戦のみ)。棋譜は携帯中継や名人戦棋譜速報など、公に公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・文中に登場する棋士の肩書は、全て対局当時のものです。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、あらきっぺの独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、あくまで、一個人の見解なので、妄信し過ぎないことを推奨いたします。

 

最新戦法の事情 居飛車編
(2020.1/1~1/31)

 

調査対象局は95局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。

 

角換わり

基本形は避けられつつある?


25局出現。

相変わらず基本形から△5二玉→△4二玉と玉を往復する作戦が最多数でしたが、出現数は5局です。昨年の10月では3割の出現率だったので、減少傾向にありますね。これは、▲4五桂と跳ねて行く「攻撃志向型」が有力であることが要因の一つだと考えられます。

 

これで後手が潰れている訳では無いのですが、先手は一方的に攻める展開に持ち込めるので、実戦的な勝ちやすさを握っていることは確かです。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年1月号 居飛車編)

 

そこで、後手は違う形で先手の攻めを待ち構える動きが出ています。今回は、「一手パス待機策」について掘り下げてみましょう。

 

00一手パス待機

一手パス待機策とは、キャプションで示したように、意図的に手損をして基本形から一手パスした状態で待機する指し方のことです。あえて敵に手を渡し、先手が余分に指した手をマイナスに作用させる狙いがあります。具体的な解説は、こちらの記事を参照してください。

プロの公式戦から分析する最新戦法の事情(10月・居飛車編)

 

00一手パス待機

さて。ここから先手は大まかに分けると、以下の三つの選択肢があります。

(1)▲7九玉型で▲4五桂と跳ねる
(2)▲8八玉型で▲4五桂と跳ねる
(3)銀矢倉を作る  

まずは、(1)の▲7九玉△5二玉▲4五桂と仕掛ける手を見ていきましょう。(第1図)

 

2020.1.8 第33期竜王戦2組ランキング戦 ▲三枚堂達也七段VS△糸谷哲郎八戦から抜粋。

これは攻撃志向型と瓜二つの局面ですね。ただ、後手玉の位置が5二へ移動していることが違います。これがどのような影響を及ぼすのでしょうか。

攻撃志向型の場合、後手は△2二銀と引く手が定跡でした。ですが、この場合は後手玉の位置が5二なので、△4四銀と上がる手が成立します。その理由は後ほど明らかになるので、まずは実戦の進行を追いましょう。(第2図)

 

先手はもちろん▲2四歩△同歩▲同飛で2筋の歩を交換しますが、このとき△1三角と迎撃できるのが後手の自慢になります。(途中図)

 

先手は横歩を取ることはできますが、それを指すと簡単に飛車が捕まってしまいます。よって、ここは▲2九飛と撤退するよりありませんが、△4六角で歩を刈り取られると、4五の桂が不安定ですね。(第3図)

 

さて。実を言うと、この△1三角という反撃は、後手玉が4二のときでも指すことが出来る技ではありました。

しかし、△4二玉型だと△4五銀直▲同銀△同銀のあとに▲6三銀と放り込まれる攻め筋があるので、後手は旨味がないのです。けれども、この形ならその心配は無用ですね。つまり、通常形よりも守備力が高いので△1三角というカウンターが決行しやすいのです。

 

第3図は後手陣の隙が少なく、先手は損な条件で攻めさせられている印象を受けます。難しいところはありますが、先手は好きこのんで選ぶ変化ではないと言えるでしょう。

 

改めて、冒頭の局面に戻ります。

00一手パス待機

次に、▲7九玉△5二玉▲8八玉△4二玉▲6七銀で銀矢倉を作るプランの話をします。(第4図)

 

2020.1.19放映 第68回NHK杯3回戦第6局 ▲広瀬章人八段VS△稲葉陽八段戦から抜粋。(棋譜はこちら)

これは、手得を囲いの強化に活かすという趣旨ですね。しかし、銀を引くと攻撃力が落ちるという弊害があり、後手はそれを咎めに来ます。具体的には△5五銀で攻めを催促してくる手が厄介ですね。詳しくは、以下の記事を参照してください。

NHK杯 広瀬 稲葉第69回NHK杯 広瀬章人八段VS稲葉陽八段戦の解説記

 

銀矢倉を作るプランは玉が堅いので魅力的ではあるのですが、現状、先手はこの△5五銀に手を焼いており、なかなか成果が上がっていないのが実情です。後手としては恐れるに足りない変化という印象ですね。

 

改めて、一手パス待機策の基本図に戻ります。

00一手パス待機

こういった背景があるので、先手は(2)の「▲8八玉型で▲4五桂を跳ねる」というプランを選ぶのが最適だと考えています。詳しい解説につきましては、豪華版のほうをご覧くださいませ。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年2月号 居飛車編)

 

 

矢倉

急戦矢倉が優秀。


23局出現。1月もコンスタントに指されており、角換わりに次ぐ対局数でした。

後手は急戦策が以前のようには突き刺さらなくなったので、昨今ではじっくり組み合う将棋を選択するケースが増えてきました。これに対して先手はいくつかのプランがあるのですが、人気を博しているのは急戦矢倉です。(第5図)

 

2020.1.29 第78期順位戦A級8回戦 ▲羽生善治九段VS△木村一基王位段戦から抜粋。

この局面は、[急戦矢倉VS金矢倉]という構図になると出現しやすい形ですね。

ただ、一昔前までは、このような局面になれば矢倉側に不満がないと認識されていました。その一番の理由は、6六の銀を追い払う態勢が間に合っているからです。確かに、この銀が撤退するようでは攻めが上手くいくとは思えません。

 

ところが、最近ではこの位置から銀が追われても攻めが続くことが分かったので、見解が変わりつつあります。具体的には、▲5七銀と引く手が有力です。これが急戦矢倉に新たな息吹を与える着想でした。(途中図)

 

最新 居飛車

自ら銀を下がるので攻めとは真逆のベクトルに向かっているように感じるかもしれません。ですが、これにより角道を通したことが先手の主張なのです。以降は、5筋ではなく、2~4筋を戦場にすることを念頭に置いて戦います。

 

最新 居飛車

後手は△6五歩▲9六歩△3一角で角を使う準備を進めますが、先手は構わず▲4五歩で攻撃を開始します。△8六歩▲同歩△同角▲8七歩△6四角で角を良いポジションに運ばれますが、▲4六銀左と上がっておけば問題ありません。(第6図)

 

最新 居飛車

ここに銀を配置しておけば、角の睨みはそこまで気にならないですね。ここからは、▲2四歩△同歩▲2五歩という攻めをメインにして後手陣を攻めることになります。

第6図は互角の範疇かとは思いますが、先手のほうが攻勢に出ている分、勝ちやすい将棋という印象を受けます。加えて、後手は6三の銀が使いにくいこともネックですね。前線に繰り出すことは難しいですし、4筋への応援もできないので、攻めにも受けにも運用しづらい駒になっています。

 

現環境での後手は、自分の急戦は上手くいかず、相手の急戦は厄介という歯がゆい状況に直面しており、工夫が求められていると言えるでしょう。先手としては追い風が吹いていますね。

 



 

相掛かり

腰掛け銀に組ませない。


12局出現。

対局数で言うと12月からは4割減となっており、急落しています。これは相掛かりがダメというよりかは、角換わりの基本形や矢倉で先手が押し気味に戦っていることが原因かと考えています。つまり、2手目△8四歩の将棋の母数が減ったので、相掛かりも減ってしまったという可能性が高いと思われます。

 

環境としては、先手が[▲2八飛・▲4七銀型]の構えを作ろうとする傾向が強いですね。これは、現環境で後手の主流となっている[△5二玉・△7二銀型]を打ち破るために編み出された布陣です。(参考図)

 

最新 居飛車

後手としては、これを真っ向から受けて立つのも一つの方法です。しかし、そもそもこれを発動させなければ良いというのも、もっともな話ですね。今回は、その趣旨に沿った組み方を紹介しましょう。(第7図)

 

最新 居飛車

2020.1.23 第78期順位戦B級1組11回戦 ▲山崎隆之八段VS△行方尚史九段戦から抜粋。

ご覧のように、後手は先後同型を保って態度を明らかにしないようにしています。相手が玉を移動するまでは、こちらも居玉を維持しようという腹積もりですね。

本譜はここから▲4六歩△8六歩▲同歩△同飛▲4七銀で例の形に組みました。ただ、この段階で▲4七銀型を作ると形を決め過ぎている嫌いがあります。というのも、△8二飛▲8七歩△8三銀という変化を与えるからです。(第8図)

 

最新 居飛車

UFO銀に組むことが、先手の早い▲4七銀型を咎める動きになります。

UFO銀に対しては、飛車を中段に構えて相手の攻めを牽制することがセオリーですね。しかし、この場合は4筋の配置が▲2六飛型とミスマッチという感があり、▲4七銀型の利点が活きにくい設定になっています。先手は作戦負けという訳ではありませんが、この立ち上がりでは先手の利が生きにくい将棋という印象を受けます。

 

現環境の相掛かりは、大前提として後手の[△5二玉・△7二銀型]を打ち破ることを念頭にいろいろと模索しています。そのための手段の一つが[▲2八飛・▲4七銀型]なのですが、後手もこれを組ませないようにあれこれ牽制しているといったところです。この虚々実々の駆け引きで上手く立ち回ることが、相掛かりのキーと言えそうですね。

 

 

雁木

環境に変化あり!


13局出現。後手番での採用が11局ありました。2手目に△3四歩を選ぶ居飛車党が頼りにしている戦法であることが窺えます。

雁木に対しては、大まかに分けると

・腰掛け銀
・早繰り銀
・矢倉

という三つの対策があるのですが、現環境での一番人気は腰掛け銀です。この将棋を掘り下げていきましょう。(第9図)

 

最新 居飛車

2020.1.22 第78期順位戦B級2組9回戦 ▲大石直嗣七段VS△中村修九段戦から抜粋。

腰掛け銀は速攻で良さを求めることが主眼なので、囲いはさっと作れる美濃が最適です。これに対して、雁木側は8筋の歩交換を優先するのが有力な対策の一つとして認知されています。

 

さて。ここで先手は歩交換を受けるか否かという選択を迫られているのですが、雁木側に歩を持たれると、一方的に攻める将棋にならないという弊害があります。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

居飛車 最新最新戦法の事情(2020年1月号・居飛車編)

 

最新 居飛車

そこで、本譜は▲7七角と上がって歩交換を阻止しました。しかし、これはこれで違う問題点を抱えることになるのです。(第10図)

 

最新 居飛車

▲7七角を上がった場合、雁木は△5三銀型を足早に作ってきます。これが先手にとって、なかなか面倒な相手なのです。

ここから後手は、△7四歩→△6四銀→△7五歩という要領で先手の角頭に照準を絞って攻めてくることが予想されます。△7五歩が実現すると、先手は▲7七角と上がった手がマイナスに作用してしまいます。それをケアするなら▲6六歩→▲6七金が一案ですが、角道が止まると速攻志向という趣旨から外れてしまうので、先手としては嬉しい展開ではありません。

 

最新 居飛車

要するに、左美濃と▲7七角型の組み合わせが良くないので、先手は不都合が生じているという訳なのです。

なので、雁木は腰掛け銀を相手にしても互角に戦えていた環境ではあったのですが、月末に大きな動きがありました。(第11図)

 

最新 居飛車

2020.1.31 第68期王座戦一次予選 ▲増田康宏六段VS△青嶋未来五段戦から抜粋。

これも先程とよく似ている将棋ですが、先手は8筋を受けていませんね。代わりに、▲7八銀を優先していることが違いです。

さて。ここで後手は△8六歩といけないと話がおかしいのですが、この局面においては、それが実行しにくいという背景があるのです。その仕組みについては、豪華版の記事をご覧くださいませ。

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年2月号 居飛車編)

 

 

一手損角換わり

現環境は互角の勝負。


12局出現。雁木とほぼ同様の出現数であり、こちらも2手目に△3四歩と指すプレイヤーの支持を集めていることが分かります。

先手が一手損角換わりを真っ向から咎めるには、早繰り銀で速攻を仕掛けること。これしか道はありません。裏を返せば、後手は早繰り銀への対策を完備させてしまえば、弱点のない完全な戦法であることが裏付けられますね。

この戦型の後手は長年にわたりそれを模索し続けており、現環境では以下の局面が最適ではないかと考えられています。(第12図)

 

最新 居飛車

2020.1.24 第68期王座戦一次予選 ▲金井恒太六段VS△渡辺大夢五段戦から抜粋。

△3二金を保留して腰掛け銀を優先することが、目下のところ注目を集めている手法です。▲4六銀には△4五歩で迎撃できるので、この形に組まれると先手も一筋縄にはいきません。ゆえに、▲5八金右で囲いを整備しているのですね。

 

最新 居飛車

さて。先手は囲いが▲7八玉型なので、後手は8筋の歩を伸ばすのが最も脅威を与える攻めになります。よって、ここから△8四歩▲7七銀△8五歩と指すのは自然と言えるでしょう。先手も▲2六銀と上がって、いよいよ攻撃を開始します。(途中図)

 

最新 居飛車

角換わりにおいて、このように相手が棒銀を繰り出してきた際には、△1四歩と端歩を突くのがセオリーです。以下、▲3五歩△3二金▲3四歩△同銀▲3七銀までは妥当な進行ですね。ここまでは前例もある将棋です。(第13図)

 

最新 居飛車

先手が銀を引き下がってくれたので、後手は一潰しにされる心配はなくなりました。ここは△4三銀左と形を整える手が候補手で、ほぼ互角の将棋でしょう。

 

この将棋は先手に「▲4六銀」という符号を許さなければ、後手はそう簡単には潰されません。始めのほうで少し受け身にはなりますが、きちんと対応すれば十分に戦えます。現環境は、後手も不満なく指せる戦法と評価できるでしょう。

 

 

その他の戦型

特にぱっとしない。


10局出現。2手目△8四歩が減少傾向にあるので、12月と比較すると出現数は増えました。しかし、何か画期的な作戦が登場したという話は無く、あまりぱっとしない印象です。

現環境は一手損角換わりが健闘しているので、奇をてらうくらいなら、それを指すほうが無難と言えますね。

 


お知らせ

プロ棋界の公式戦で指されている最新戦法の内容をもっと深く知りたい! という御方は、こちらの記事をご覧ください!

 

参考 最新戦法の事情【豪華版】(2020年2月号 居飛車編)

こちらの記事は有料(300円)です。その分、この通常版の記事よりもさらに詳しいコンテンツになっております。内容量といたしましては、通常版の約2~3倍ほどです。もっと詳しく! という御方は、ぜひご覧ください!

 

 

 


今回のまとめと展望

 

・現環境は、角換わりと矢倉で先手が押し気味に戦えており、2手目△8四歩の将棋は支持率が低下した印象を受ける。特に、矢倉が復権したことは先手にとって大きく、後手は対応に追われている状況だ。

 

 

・雁木は後手にとって面白い選択肢だったが、先手がクレバーな駒組みを編み出したことにより、環境が変わりそう。それゆえ、2手目△3四歩の将棋は一手損角換わりが最強と見る。

それでは、また。ご愛読、ありがとうございました!

4 Comments

栗太郎

わかりやすく参考になります。
一つの戦法で対振り、対居飛車に使える戦法はありますか。
対振りで有力な戦法はなんですか。
相居飛車で有力な戦法はなんですか。

返信する
あらきっぺ

はじめまして。

一つの戦法で全ての戦法をまかなおうとするならば、中飛車をお薦め致します。

どんな戦法が有力なのかは、当ブログの「最新戦法の事情」の記事を読み込んでご判断されれば良いのではないでしょうか。

返信する
ウッディ

最近の相掛かりの将棋で、9筋の交換を入れてから68玉と上がる将棋をよく見るのですが、9筋の交換を入れないで68玉と上がるのとではどのような変化の際に得になるのでしょうか?

返信する
あらきっぺ

なかなか難しいご質問です。

9筋の交換を入っていると、後手が△8六歩▲同歩△同飛と交換してきたときに先手は▲8七歩ではない手が指せるというメリットが生まれます。なので、▲3六歩や▲4六歩を突いていても、その歩を横歩取りの要領で取られる手を回避しやすくなることは確かですね。

しかしながら、この交換が入っているお陰で後手が得をするケースも考えられ、(端攻めだったり、△9三桂と跳ぶ筋など)「どのような変化の際に得になるのか?」という点においては、なかなかお答えしにくいところがあります。ケースバイケースとしか言いようがないのかもしれません。

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