最新戦法の事情【居飛車編 春季号】を公開しました。詳細は、ここをタップ!

最新戦法の事情・居飛車編(2021年8月号)

居飛車 定跡

どうも、あらきっぺです。先日、誕生日を迎えました。まぁ、誕生日を迎えることに特に喜びは無いですが、こういう日だと普段ではお会いしない人から連絡が来たりするのが嬉しいですね。

 

タイトルに記載している通り、相居飛車の将棋から最新戦法の事情を分析したいと思います。

前回の内容は、こちらからどうぞ。

最新 居飛車2021.6~7最新戦法の事情・居飛車編(2021年6・7月合併号)

 

注意事項

 

・調査対象の将棋は、先月のプロの公式戦から(男性棋戦のみ)。棋譜はネット上や棋譜中継アプリにて公開されているものから収集。全ての公式戦の棋譜を見ているわけではありません。ご了承ください。

 

・記事の内容は、プロの公式戦の棋譜を参考にしておりますが、それを元にして筆者独自の研究内容も含まれております。記事内容の全てが棋譜の引用という訳ではありません。

 

・記事中に記載している出現率は、小数点第二位を四捨五入した数字になります。

 

・戦法や局面に対する評価や判断は、筆者の独断と偏見が多分に混じっております。当記事の内容を参考にして頂けるのは執筆者としては光栄ですが、妄信し過ぎないことを推奨致します。

 

最新戦法の事情 居飛車編
(2020.7/1~7/31)

 

調査対象局は103局。それでは、戦型ごとに見て行きましょう。

 

角換わり

基本形からの逸脱


21局出現。少なくはありませんが、爆発的に指されている訳でもありません。現環境の角換わりは、かなり定跡が煮詰まり、「一見さんお断り」という雰囲気すら漂います。

角換わりを採用した際、先手は大きく分けると腰掛け銀と早繰り銀のどちらかを選ぶことになりますが、現環境では腰掛け銀が人気です。これの理由としては、「スライド形」の将棋に誘導すれば、満足に戦えるという背景があるからです。

角換わり 腰掛け銀

なお、「スライド形」とはこの局面のことを指します。この局面は、基本形の将棋と比較すると手番が一手ズレていることが特徴です。先手はここに至るまでに手番を調整する工夫(自分が一手損する。もしくは後手に一手損を強要させる)を講じれば、「スライド形」の将棋に誘導することが可能ですね。詳しい理屈は、以下の記事をご覧くださいませ。

最新戦法の事情最新戦法の事情・居飛車編(2021年4・5月合併号)

 

角換わり 腰掛け銀

さて、ここで後手は△5四銀と上がるのが自然です。対して先手は、▲6七銀と引いて銀矢倉を作るのが有力策の一つ。詳しくは前回の記事をご覧ください。

また、△5四銀には▲4五桂と跳ねてしまうのも有力です。(第1図)

なお、この将棋の実例としては、第34期竜王戦 決勝トーナメント ▲梶浦宏孝七段VS△羽生善治九段戦(2021.7.9)が挙げられます。(棋譜はこちら

角換わり 腰掛け銀

ここからは、△4四銀▲2四歩△同歩▲同飛が進行の一例です。この変化は、以降もかなり深いところまで定跡化が進んでいますが、現環境では先手の旗色が良いと見られている傾向があり、後手は苦戦している印象です。

なお、ここからの詳しい内容は、以下の記事をご覧くださいませ。

【居飛車編】(2021年8月号 豪華版)

 

角換わり 腰掛け銀

つまり、後手はここで△5四銀と上がると(1)▲6七銀(2)▲4五桂という二つの強敵があり、対応に手を焼いています。どちらを選ばれても互角以上の局面を作られてしまうようでは、作戦として全く旨味がありません。「スライド形」の将棋になれば、先手が満足に戦える将棋になるでしょう。

 

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こういった背景があるので、後手はどうにかして「スライド形」の将棋を回避しなければいけません。また、「スライド形」は「基本形」からも誘導される恐れがあるので、「スライド形」を避けるということは、「基本形」も避けた方が賢明という話になってきます。

なので、現環境の後手は、こういった形に活路を求める動きも出ています。(第2図)

角換わり 腰掛け銀

図が示すように、素早く6筋の位を取ってしまうのが後手の工夫です。こうしておけば、スライド形や基本形の将棋にはなりませんね。

なお、この作戦は以前から存在していましたが、先手の猛攻を浴びやすく危うい指し方と認知されている節がありました。ただ、環境の変化に伴い、後手は古い形にスポットを当ててきたのです。

なお、この作戦の採用した例としては、第80期順位戦A級2回戦 ▲広瀬章人八段VS△豊島将之竜王戦(2021.7.6)が挙げられます。(棋譜はこちら

角換わり 腰掛け銀

さて、次に△8一飛が入ると後手陣は大いに安定するので、先手はその前に動いていく必要があります。具体的には、▲3五歩△同歩▲4五桂△2二銀▲2四歩△同歩▲7五歩△8一飛▲7四歩△同銀▲6四角△4四角▲5六銀と攻め掛かるのが有力ですね。

長手数進めてしまい恐縮ですが、これも定跡化されている手順です。(第3図)

なお、上記手順の詳しい解説は、以下の記事をご参照くださいませ。

冬プロの公式戦から分析する最新戦法の事情(11月・居飛車編) 年末プロの公式戦から分析する最新戦法の事情(12月・居飛車編)

 

角換わり 腰掛け銀

この局面を迎えたとき、後手は次の▲5五銀が防げないので対処に困っているように思えます。それゆえ、この作戦は危険と見られていたのですが、ここから正確に応じれば、均衡を保つことが出来るのです。

まずは、じっと△2三銀と上がります。先手は▲5五銀が自然ですが、そこで△7二歩と踏ん張るのが良い辛抱。これが見た目以上に手強い受けですね。(第4図)

角換わり 腰掛け銀

先手は角を取ることが出来ますが、▲4四銀△同歩は桂が詰むので忙しいですね。また、先に▲3三歩と叩く手もありますが、△同桂▲4四銀△同歩▲3三桂成△同玉で大変。この変化は歩切れが悩みのタネです。

先手は6四の角が息苦しいので、一時的な角銀交換くらいではリードを奪うことが望めません。加えて、右辺の銀冠が手厚いことも見逃せないですね。この変化は、先手も簡単には攻め切れない印象です。

 

それでは、結論に入ります。現環境の先手は、基本形スライド形の将棋になれば満足に戦うことが出来ます。ゆえに、後手側はそれを避けるため、違う形に策を求めるという構図が展開されています。

角換わり 腰掛け銀

この△6五歩優先型はその一環であり、先手にとって侮れない相手と言えます。今後の角換わり腰掛け銀は、こういった形が主戦場になっていくのかも知れませんね。

 

矢倉

銀を上がらせコビンを狙う


28局出現。出現率は27.2%であり、相変わらず活発に指されています。矢倉は角換わりと比較すると力戦模様になることが多く、研究勝負にはなりにくい性質があります。そういったところに、角換わりよりも多く指されている理由があるのかも知れません。

とはいえ、それでも定跡化は着々と進んでいることは確かです。特に著しく定跡の整備が進んでいるのが、[△6三銀・△7三桂型]を優先的に作る急戦策ですね。

矢倉 定跡

この急戦策に対して、先手は早繰り銀で先攻する姿勢を見せるのが対策の一つです。従来はこれで満足に戦えると見られていましたが、その風潮を一変させたのが、後手の袖飛車作戦。これが編み出されてから、[△6三銀・△7三桂型]の採用数はうなぎ登りになりました。

なお、この作戦の優秀性については、以下の記事をご覧くださいませ。

最新戦法の事情最新戦法の事情・居飛車編(2021年4・5月合併号)

 

矢倉 定跡

さて、先手はいずれ▲3五歩から仕掛けることになりますが、それを決行すると△7五歩▲同歩△8五桂のカウンターを覚悟しなければいけません。なので、攻めるタイミングはかなり慎重に選ぶ必要があります。

ひとまず、▲5六歩で角道を通すのは必須です。対して後手も△4四歩▲5八金△5二金で陣形を整備します。後手は雁木に組み、将来的に△4五歩▲同銀△3三桂で銀挟みを狙いにしていますね。(第5図)

矢倉 急戦 対策

先手はぼやぼやしていると銀挟みが来るので、そろそろ仕掛けを考えたいところ。動くなら▲3五歩ですが、その前に▲6九玉△4三銀の交換を入れてから▲3五歩を決行するのがベストのタイミングになります。

その局面で動くことが最適な理由は後述するので、ひとまず解説を進めましょう。(第6図)

矢倉 急戦 対策

先手が戦いの火蓋を切ったので、後手もカウンターを撃つ時が来ました。まずは△7五歩▲同歩△4五歩▲同銀と歩を突き捨てて大駒を使いやすくし、△3五歩▲同角で一歩を補充します。ただ、このとき先手が△4三銀を見てから仕掛けを決行した意図が見えて来ます。(第7図)

矢倉 急戦 対策

ここで後手は△7六歩や△8五桂などで攻めるのが一案ですが、いずれにせよ先手は▲2四歩△同歩▲同角の筋で反撃することが出来ます。この攻め筋がなかなか厄介なので、後手は攻めに専念できないことが歯がゆいですね。

なお、この変化の実例としては、第92期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局 ▲渡辺明名人VS△藤井聡太棋聖戦(2021.7.3)が挙げられます。(棋譜はこちら)

 

矢倉 急戦 対策

このように、後手の袖飛車作戦に対しては、△4三銀を見て仕掛けるのがポイントです。[△4三銀・△5一玉型]の瞬間は、後手玉のコビンが開いています。その隙を突けば先手も悪くはなりません。

矢倉 急戦 対策

基本的に、後手の作戦は

・相手が動いてきたらカウンター
・動いてこなければ雁木に組む

という二段構えなのですが、この変化は△4三銀が逆手に取られているので、作戦の根本的な弱点を突かれている感があります。第7図の優劣は互角の範疇かとは思いますが、後手は以前のような押せ押せムードではなくなってきた印象ですね。

 



相掛かり

▲6八銀型の中住まいを作る


30局出現。出現率は29.1%であり、今回の期間では、最も多く指された戦型でした。相掛かりは先手番が主導権を握りやすく、かつ駒組みの自由度も高いので閉塞感を感じることはありません。その辺りが支持が得られている理由でしょうか。

相掛かりの先手は、長らく▲8七歩を打たずに駒組みを進める作戦に人気が集まっていました。けれども、現環境では後手も対策を整えており、なかなか上手く行かないケースが多いですね。詳しい内容は、以下の記事をご覧くださいませ。

【後手の有力策1 ▲6八玉型の場合】
最新 居飛車最新戦法の事情・居飛車編(2020年12月号)

【後手の有力策2 ▲5八玉型(Alpha流)の場合】
最新 居飛車2021.6~7最新戦法の事情・居飛車編(2021年6・7月合併号)

ゆえに、現環境の先手は違う作戦を採用することが多くなり、様々な将棋が指されています。中でも、以下の将棋は面白い作戦に感じました。(第8図)

相掛かり 定跡

先手が中住まいに組み、かつ無難に▲8七歩と打つ指し方を選ぶと、こういった局面は頻出します。第8図は玉の位置に違いはあれど、それ以外は全く同じです。いわゆるミラーゲームですね。

相掛かり 定跡

ここで先手は、▲3六歩と突く手が一般的。ですが、▲5八玉型の場合は△7四飛が厄介な揺さぶりになります。歩損を避けるなら▲7七金になりますが、△8四飛と戻されたときにしっくり来る手が難しいですね。

このように、▲5八玉型でミラーゲームになったときは、自然な▲3六歩がやや指しにくくなる弊害があります。

 

なお、少し話が脇道に逸れますが、▲6八玉型であれば△7四飛の揺さぶりは利きません。詳しい理由は、以下の記事をご参照くださいませ。

【最新戦法の事情】(2020年4月号 豪華版)

 

相掛かり 定跡

さて、こういった背景があるので▲5八玉型でミラーゲームを選ぶのは先手にとって得策ではないという風潮がありました……が、ここから先手は工夫を見せました。まずは▲7七角と上がります。これが目新しい指し方ですね。(第9図)

なお、この作戦の実例としては、第80期順位戦B級1組4回戦 ▲屋敷伸之九段VS△郷田真隆九段戦(2021.7.15)が挙げられます(棋譜はこちら

相掛かり 定跡

この角上がりは、次に▲6八銀と上がる準備です。銀を6八に配置することで囲いを強化し、急戦に強い布陣を手に入れることがこの手の狙いですね。

ここからの指し方は多岐に亘りますが、後手が無難に駒組みを進めるプランを見ていきましょう。この場合、次の局面になることが予想されますね。(第10図)

相掛かり 定跡

先手は▲6八銀と上がった後は、▲3六歩→▲3七桂で桂を活用するのが基本姿勢になります。この構えを作ったら準備OK。あとはガンガン攻め込んで行きましょう。

具体的には、▲1五歩△同歩▲3五歩と突っ掛けるのがシャープな攻めになります。(第11図)

相掛かり 定跡

これを△同歩だと、▲1五香△同香▲2四歩△同歩▲同飛という要領で暴れていきます。香損の攻めなので強引ですが、次に▲3三歩の叩きや▲6六角で両取りを掛ける筋があるので、かなり迫力のある攻めになっています。後手は8四の飛が目標にされ、お荷物になっていることが泣きどころですね。

 

相掛かり 定跡

このように、▲6八銀型の中住まいに組めれば、先手はかなり強気に戦うことが可能です。中央が堅い中住まいは弱点が少ないので、過激な攻めを決行しても反動が弱いことが心強いですね。作戦の性質上、金銀が前に出にくいので軽い攻めにはなってしまいますが、後手も相手の攻めを受け止めるのは大変です。

相掛かり 定跡

この指し方は、まだ多くの実戦例がある訳ではないですが、堅い玉型を作れるので実戦的な勝ちやすさを感じます。今後の主流になり得るかどうか、要注目だと言えるでしょう。

 

雁木

時代は持久戦


14局出現。盛んに指されている訳ではないですが、決定的な対策が打ち出された訳でもないので廃れてもいません。現環境の相居飛車で2手目に△3四歩を指すのなら、この戦法が最有力ですね。

雁木の対策は大きく分けると、

(1)急戦を決行する
(2)相雁木にする
(3)矢倉で対抗する

この三つに分かれます。

ただ、急戦は雁木側も受け方を整備しており、相雁木は打開が難しい。という訳で、昨今では(3)の矢倉で対抗するケースが増加傾向にあります。今回の期間では6局指されました。では、その戦型を見ていきましょう。(第12図)

雁木 ブログ 将棋

一口に「矢倉で対抗する」といっても様々な指し方がありますが、現環境でホットなのは総矢倉に組む手法です。対雁木において、これを作ってしまうと△6五歩の仕掛けを誘発しますが、前もって▲4六角型に組んでおけば、その心配はありません。

雁木 ブログ 将棋

先手はもう囲いが完了しているので、そろそろ攻撃態勢を作りたいところ。手始めに▲5五歩△同歩▲同角と動きます。このように、[総矢倉+5筋の歩交換]がこのところ注目を集めている指し方ですね。(途中図)

なお、この指し方の実例としては、第71回NHK杯1回戦第14局 ▲渡辺和史四段VS△井上慶太九段戦(2021.7.4放映)が挙げられます。(棋譜はこちら

雁木 ブログ 将棋

このあとは、▲5六銀型を作ることが先手の狙いになります。▲5六銀型に組めれば△6五歩の仕掛けを牽制できるので、その配置を作ることは非常に大きな意味がありますね。この局面になれば、矢倉側は満足のいく戦いが出来るでしょう。

雁木 ブログ 将棋

現環境の雁木は急戦を決行しても簡単には潰れないので、このようにじっくり矢倉に組んで戦う姿勢の方が面白いかも知れません。従来の雁木対策は急戦一色でしたが、時代が変わりつつありますね。

 

その他の戦型

横歩・一手損は激減


10局出現。出現率は9.7%であり、ごくたまに指されるといった程度です。

一時期は横歩取りや一手損角換わりが多く指された時期もありましたが、今回の期間に関しては、横歩取りは3局、一手損角換わりは1局という有様でした。これは、2手目△8四歩や雁木の方が遥かに有力と見られている証左とも受け取れます。

現環境の相居飛車は多様性が消え、かなり戦法が淘汰されつつあると言えるでしょう。

 


お知らせ

序盤の知識をもっと高めたい! 常に作戦勝ちの状態で戦いたい! という方は、以下の記事をご覧ください。

参考 最新戦法の事情【居飛車編】(2021年8月号 豪華版

 

最新の戦術には興味があるけど、どう指して良いのか分からない。どうしてプロがこういった指し方をするのかを知りたい。そういったお気持ちがある方には、うってつけのコンテンツとなっております。

 

有料(300円)ではありますが、その分、内容は深堀しております。よろしければご覧ください!

 

今回のまとめと展望

 

【2手目△8四歩系が全盛を誇る】

兼ねてから2手目△8四歩系統の将棋は多く指されていましたが、現環境ではそれがさらに加速しています。

基本的に、2手目△3四歩系統の将棋(雁木・横歩取り・一手損角換わり)は何らかのマイナスを受け入れなければいけません。つまり、雁木は早々と角道を止めるので主導権を握りにくいデメリットがあり、横歩は歩損、一手損角換わりは手損がデメリットです。

これらのデメリットは勝敗に直結するような損では無いので、勝負としては大きな影響は無いでしょう。ただ、昨今は評価値という形でその損が可視化されてしまうことと、プロは細かい損失にも神経を尖らせるものなので、積極的に採用するという意識にならないのかもしれません。「たまに指す分には構わないが、後手番のエースは2手目△8四歩」と考えているプレイヤーが多い印象は受けますね。

 

【先攻+堅陣を目指せ!】

拙著にも記したように、現代将棋は平成後期の将棋とは違い、堅さを求めない特徴があります。しかし、これはあくまで先攻(もしくは速攻)するために手数を切り詰める必要があり、そのために「やむを得ず堅陣を諦めている」という背景もあります。

ところが、現環境では「相手よりも堅い陣形を作った上で先攻を目指す」という欲張った姿勢を取る傾向が目立っているのです。

角換わり 腰掛け銀

例えば、この角換わりの将棋はそれを実践した例です。先手玉は囲いの中に入っているので、相手よりも堅い状態で先攻していることが分かりますね。

相掛かり 定跡

また、この相掛かりの将棋も、「堅い陣形を作った上で先攻を目指す」というプランを想定した指し方です。先手は浮き飛車と中住まいなので速攻に適性の高いチョイスをしていますが、それでいて堅陣を作ろうとしているところに今までとの相違点を感じますね。

雁木 ブログ 将棋

他には、雁木に対して総矢倉に組む作戦もその一端です。基本的に堅陣を作ることを優先すると、相手から先攻されるリスクが高まります。が、これは雁木が主導権を取りにくい性質があることと、△6五歩(相手の仕掛け)を封じる工夫を凝らすことで、[堅陣+先攻]の理想を実現しようとしていますね。

 

2、3年前までは、「とにかく速攻」という風潮がありました。しかし、正直なところ、速攻するパターンはそこまで多くもなく含みも少ないので、受け側の目が慣れてしまったところがあります。堅陣を作るということは力を溜めているということでもあり、それはすなわち「単純に速攻するだけでは、なかなか上手く行かない」ということを暗に示唆しているようにも感じます。

とはいえ、「先攻は正義」という大前提は2、3年前と変わりません。現代将棋は、相手の速攻を防ぎながら堅陣を作り、その上で先攻するという駒組みを目指しています。それゆえ、従来よりも駒組みの内容が高度になっている印象を受けますね。

 

それでは、また。ご愛読いただき、ありがとうございました!

3 COMMENTS

あんぱん

77銀型矢倉に対する65桂馬速攻について質問させて欲しいです。今のプロの対策は、65桂馬の前に79角〜68角で急戦を防いでしまうというものだと思いますが、その前に桂馬を跳ねてしまうことはできないんでしょうか。一例として、①76歩86歩68銀34歩77銀85歩26歩74歩25歩73桂78金33角79角に65桂、あるいは②11手目78金に代えて79角にも65桂といった具合です。竜王戦の羽生豊島戦でも65桂馬速攻を採用した豊島竜王が勝利していますが、65桂馬速攻が採用されていない現状を見ますと上の手順に落とし穴があるんでしょうか…

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あらきっぺ

確かに、その作戦を講じれば後手は早めに桂を跳ぶことは可能です。しかしながら、それで上手く行く保証はないので、昨今では見送っている傾向がありますね。詳しくは、こちらの記事をご覧くださいませ。

また、現環境では[△6三銀・△7三桂型]に組む急戦策が非常に有力と認知されているので、△6五桂速攻を選ぶ必要が無いという背景もあるかと考えられます。ただし、本文にも記したように先手も対策を練っているので、再び△6五桂速攻が陽の目を浴びることもあるやもしれませんね。

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